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- 三郎のきもち
今日は私が珍しく憤りを感じた出来事について書きたいと思います。
そもそも自然も人間も合理化されたり整理整頓されたりする対象ではないよな、ということを改めて考えさせられた思い出です。
新宿中央公園
私の育った町東京都新宿区西新宿には中央公園という自然公園があります。
小学生の頃は春から秋ごろまで学校が終わると毎日のように虫取りに行っていました。
バッタやカマキリはたくさんいました。そしてセミ。
噴水(実際には噴水していないのでまあ池ですね)がありましたので、そこではトンボや、ヤゴも採れました。
トンボは、ギンヤンマとかオニヤンマは残念ながらいませんでしたが、普通にシオカラトンボやアキアカネは飛んでいました。
イトトンボもいたんですよ。
No-longer-hereによるPixabayからの画像
中央公園はカエルの生息地域としても有名で、現在でも雨が降るとヒキガエルが路上に飛び出してきたりします。
オタマジャクシが噴水に居て、ヤゴとうまいことやっていたのではないかと思います。
噴水の水面にはアメンボがいました。
カナブンの木、ご神木?!
中央公園、小学生の頃はそれなりに緑豊かでしたが、ことカブト・クワガタに関していうと私の知る限りまったくいませんでした。
まあ私自身小学生のころはクヌギやコナラを見分けられなかったのですが…採れるという噂は聞いたことがありません。
新宿区の木というのがあって、それはけやきで、小さい頃から見慣れてわかりましたが、それ以外の木に関してはほとんど無知でした。
でも中央公園にもクヌギやコナラはあったのです。
20歳過ぎてからようやく、クヌギもコナラも識別できるようになりました。
それからまた年を経て、20代後半位だったのだと思います。
夏の暑い時期、久方ぶりに中央公園を散策していた時のことです。
ちょっと園路から外れて林の小道を歩いていると、あの甘酸っぱい樹液のにおいと、虫が飛んでいるブーンという音が聞こえてきました。
お!これはどこかに樹液の出ている木があるんだなと思い、自分の立っている地点から周りの木をひとつひとつ見ていきました。
するとすごい樹液を出している木が目の前にあったのです。
コナラの木でした。細いコナラです。
その木の根元部分から上1.5m位まで、樹液が噴出しており、その幹回りをものすごい数のカナブンが群れて樹液を吸っているのです。
それに紛れて随所にスズメバチも来ています。
さっきの虫の飛ぶ音はカナブンとスズメバチの音だったのですね。
そのコナラの木のすごいところは、ジュワジュワ~と樹液が出てくる音まで聞こえてくるのです。
ジュワジュワジュワ~、ジュワジュワジュワ~
すごい!私は歓喜と共にこの光景に圧倒されました。
中央公園は花が多いので昔からコガネムシ系は多かったのですが、カナブンにはめったにお目にかかれなかったのです。
たまたま飛んできて出遭う感じで、どこに発生源があるかわからなかったのです。
それがこんなに一杯樹液にたかって、中央公園にもこんなにカナブンがいたんだ~という驚きと、自分のひざ元でこういう光景が見れたことがすごくうれしかったのです。
虫が樹液を吸っている姿~、ステキ~
図鑑や昆虫写真にだって、こんなに一杯のカナブンのいる絵なんてお目にかかったことなかったです。
これはすごいいい観察ポイントを見つけてしまった、時間のある時はまた遊びに来ようとおもって、いい気分で帰宅しました。
中央公園と私の実家は目と鼻の先でした。
ひとつ気になったのは、当時中央公園に路上生活者が大挙してやってきていて、その木のそばにもブルーシートの住まいがありました。
住んでいる人の身になって考えると近くに樹液の木があるというのは、虫のブンブンする音が聞こえるし、何よりもスズメバチがうろちょろしているので、私とは違ってむしろ疎ましい存在なのではないか。
それがちょっと心配でした。嫌な予感がしました…
嫌な予感的中
それからしばらくことあるごとにカナブンの木を拝みに行っておりました。
ところが…
見つけた年の秋ごろでしたでしょうか、その木を見つけて2か月も立っていなかったかと思います。
久しぶりにカナブンの木があるところまで、林の中を歩いていくと、カナブンの木がバッサリ伐採されていたのです!!
ええー!そんなあー、なんてことだ~
私はかなり気を落ちして、家へ帰っていきました。
推測
はっきりとした原因はわかりませんが、近くにいたブルーシートの住人が区なり警察なりに訴えて切ってもらったのではと想像します。
なぜって木自体は園路から外れて林の中に入ったところにあるので園路を歩いている分には危なくないし気づかれない場所なのです。
そのカナブンの木のポイントと交番も目と鼻の先にあったのです。
樹液の出る木が迷惑がられるとすればスズメバチでしょうから。
路上生活者の言い分を警察や区がきくのか、と思われるかもしれませんが、当時は、新宿区自体が中央公園でのブルーシート生活を認めていました。
あの当時はむしろ彼らは優遇されていた感があります。
私にとっては20数年新宿に住んでいて、はじめて見つけた樹液のでるコナラのポイントだったので、見つけて数か月で伐採されるというのはあまりにも残念でした。
考察
最近ますます中央公園の「整備」は進んでいます。
整備とは、公園をきれいに整理整頓し有効活用すること。
例えば、虫がつく噴水はなくし、幼児が遊べる小プールになりました→夏だけ利用可。
バッタやカマキリがいっぱいとれた草原の広場は刈り取られ有料のグラウンドになりました。
整備とは昆虫排除のことでもあります。
何がきれいな公園だ、整理整頓された公園などくそくらえだっ!と思うのです。
難しいことはわからないですけど、自然公園から自然の多様性が失われ、公園自体のコンセプトが商業ビル化しているかのように感じます。
わざわざ遠くまで遠足や旅行にいかなくても地元に豊かな自然があればそれに越したことはないのに、公園も都市開発の一環としてひとくくりにされているように思います。
ささやかな自然観察の機会が奪われることはとても残念なことです。
そしてそのしわ寄せは弱いもの、子どもや高齢者や生きものに行くのではないでしょうか。
大挙していたブルーシートの住民たちもそのすぐあと、結局新宿区や中央公園からも排除されることになりました。
結び
カナブンの木があった場所。今は林全体が伐採され、数本しか木がない
今でも中央公園を通りかかると、このカナブンの木のことを思い出します。
そしてなんとも言えず憤りを覚えるのです。
自然も人間も、本来合理化されたり整理整頓される「対象」ではないのに。
「きれいな公園」といううたい文句のもとで実施されていることに、かえって自然の豊かさや人間が排除されていくさまを見てしまうのは私だけでしょうか?